フィレンツェもシエナもトスカーナ州。
長年に渡って住んできた土地は、サンジョヴェーゼという黒葡萄が美味しく育つ土地。
イタリア人は自分の育った土地をこよなく愛す郷土愛に満ちた国民で、それに感化されたかどうかはわからないが、私もトスカーナを愛すると同時に、黒葡萄といえばサンジョヴェーゼを愛する。
よって、「イタリアを代表するワイン」とか「ワインの王様」と呼ばれていようと、ネッビオーロ種で作るバローロに惚れたことはなかった。
正確に言うと、このバローロに会う迄は。
その日「レ・ヴォルピ・エ・ルーヴァ」で仕事をしていると、長年の友人でヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ『コントゥッチ』のオーナー、アンドレアがやって来て「今夜オープンバーで夕食に呼ばれてるから行こうよ」と言う。
22時まで仕事なのにそれでもいいと言うし、疲れているけれどどの道夕食は食べないといけないので、仕事が終わるとすぐに目と鼻の先のゴールデンヴュー・オープンバーへ。
そこで私を待っていたのは、ジュゼッペ・リナルディのバローロ3本。
まず合わせるのは、ウサギ肉のラグー和えスパゲッティ。
この頃シェフが凝っていたのか、行く度にこのラグーが出てきたっけ。
セコンドは鴨肉のソテーにじゃが芋のミルフィーユ。
右がアンドレア、左はオープンバーのパオロ。
オープンバーのオーナーも交え、4人での夕食会。
デザートにはクリームブリュレ。
頂いたバローロは
・2000年 ブルナーテ = レ・コステ
・2001年 カンヌービ・サン・ロレンツォ = ラヴェーラ
・2006年 カンヌービ・サン・ロレンツォ = ラヴェーラ
ヴィンテージに続くのは、畑の名前。
どれも美味しかったけれど、2006年がとてつもなく素晴らしかった。
人生で初めて感動したバローロで、未だこれを超えるものには出逢っていない。
そんな特別なワインの造り手べッペ・リナルディが、去る9月2日、70年の生涯に幕を閉じた。
数ヶ月前から病と闘っていたという。
近代的な物を嫌い、人の手と自然の周期のバランスを信じ、伝統的な製法を守り続けた。
このような事に直面すると、自分の好きなワインの生産地は訪ねておくべきだと痛感する。
結局私は彼に会うことなく、彼は逝ってしまった。
残されたのは、数年前からワイン造りを手伝っているという、アンナリーザ夫人と2人の娘マルタにカルロッタ。
誰よりもベッペの信念を理解しているであろうし、それを引き継いでくれることを皆が願っているはず。
高価なシャンパンが沢山並ぶオープンバーのワインセラー。
2013年11月のこの日、これらのシャンパンではなく、ベッペ・リナルディのバローロを飲めたことを、本当に幸運だと思う。
R.I.P.
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